
文の領域を越えた規則が取り入れられていないか等の法制上の問題については、各国代表の間で激しい議論が交わされた。 第二に、STCW条約の改正の検討は、もちろんSTW小委員会において行われたが、改正作業を促進するため、小委員会開催の間隔を短縮するとともに、中間作業部会が4回開催された。また、膨大な規則の変更や整理及び新しく設けられたSTCWコードの素案作成等の諸作業を行うため、各国の専門家によるコンサルタント・グループが導入された。 (2)条約の遵守と検証の方法 今回の条約改正で最も重視されたのは、条約の遵守と検証をどのようにして実行するかということであった。人的要因による海難事故が多発していることについても、78年条約それ自体に欠陥があるというよりは、加盟国の中に条約を正しく履行していない国があるということが最大の原因であると考えられるからである。このため、条約見直し作業の初期の段階では「国際資格証明書発給機関」や「国際資格制度監視機構」の設立などが提案された。 しかし、財政的な裏付けのないこれらの構想は作業の進展とともに姿を消し、それらの対策としては、 ?@PORT STATE CONTROLの強化(?T/4規則) ?Aこの条約に違反する法人や個人に対する国内罰則規定制定の強制化(?T/5規則) ?B各加盟国の条約に対する対応の報告を、期限付きで求め・その対応の内容をMS Cでチェックすること(?T/7規則)等に絞られた。 (3)FUNCTIONALAPPR0ACHの導入 当初は条約見直しの焦点として「新しい資格証明」のキー・ワードとなったFUNCTIONAL APPROACHについての概要は次のとおりである。 この考え方は、欧州各国の指示を受けて、ISF(国際海運連盟)が提案したものであるが、現在の資格証明制度においては「人」を中心に・その「人」の船内における職位・階級に応じた資格が要求され、資格証明の要件もその職位・階級にふさわしい総合的な能力が要求されている。しかし、FUNCTIONAL APPROACHにおいては船を運航するのに必要な個々の職務・機能をすべて洗い出し、合理的な基本単位にまとめ、それぞれの基本単位について職務を遂行できる能力を持つ者には、その基本単位に対する資格証明書を発給できるというものである。 これによって、従来の甲板部、機関部といった縦割りの組織や職員、部員という関係を超えて、船内組織をより柔軟なものにすることができるし、さらにそれぞれの職務・
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